あとりえにっき

写真と音楽が好き。毒親持ち。PTSDでアダルトチルドレンな感じ。

岸辺を縫うバス

漁港のまちだから
わたしの家は海辺だから
まちのなかからどうやってかえるかなあ

電車なんかない
坂を登る電車なんかない
田舎のいなかまで走るのはバス

まちを走るバスは
人も多い
家もおおい
席を譲られるおじいちゃん
包みを持ったおばあちゃん
仕事終わりのスーツおじさん
買い物袋提げたおばさん
おっきな荷物の高校球児

バスの中はごったがえし
体温とにおい
ところせましと家、ビル、マンション
押しのけて降りていくひとたち
ふいに隣の人が降りると
すっと涼しくなる
そして人はいなくなっていく
気温も下がる
なんともいえないさみしさ
誰も知ってる人なんか
いないのに。

代わりに迎えてくれるのは
海と緑色の山

田舎ならありふれた景色
小さないなか町と山が交互に現れるようになる
岸辺を縫う道が走る
大きなバスは面白いくらいに
道に沿って走る

ときおり枝や葉がまどにあたる
ぱちぱちと

いくつもの集落
少しずつ降りていくひとたち

美しい海辺
夕日が海に煌めいて
高い座席のバスだから
道の瀬から砂浜が綺麗にみえる
こんなに広いのねえこの田舎

なんこも知らない集落を超えて
やまの中からぱっとわたしの集落が見えたら

ほっ、とする。

ありがとう
わたしのいなか

おとなになっても
この田舎からでなくてよかった。